カッコウ
「それで相談って?個人的なこと?」

茂樹の言葉に小さく頷くみどり。

茂樹はわかっていてみどりの誘いに乗った。それなら話しは早い。

みどりはストレートに言う。
 

「私、先生のことが好きです。3年になって授業がなくなってしまって。先生に会いたくて。どうしていいかわからないんです。」


真っ直ぐ茂樹を見つめて、みどりは言う。
「それは困ったな。僕は結婚して子供もいるからね。須永さんの気持ちには応えられないよ。」

予想通りの答え。みどりは切迫した表情で茂樹を見て続ける。
 
「わかっています。だから遊びでいいんです。時々、会って下さい。私、家庭を壊したりしないから。絶対。」

みどりは話しているうちに、だんだん感情が入ってきて涙汲んでしまう。
 
「須永さんを傷つけるからね。それはできないよ。」

茂樹は一応、拒否の姿勢を見せる。みどりは大きく首を振って、
 
「このまま会えない方が傷付きます。」と言う。

茂樹は困った顔をした。でもみどりを受け入れるつもりが無かったら、二人きりでは会わないから。

みどりは更に言う。
 
「私、何も望まないから。ただ一緒にいたいだけなんです。少しでも。先生の近くにいたいんです。」

茂樹を落とす為の陳腐な言葉にみどりは酔っていく。

気持ちが昂って声が震えてくる。
 
「困ったな。本当に何もしてあげられないけど、いいの?」

茂樹は渋々という感じを貫く。

自分はみどりに押されただけという姿勢を崩さない。
 
「はい。時々会ってもらえれば。二人だけで。」

涙を浮かべて言うみどり。

その時、近くのテーブルで賑やかな歓声が上がる。
 
「落ち着かないね。静かな所に行こうか。」

茂樹はみどりを促して立ち上がる。

そのまま近くのホテルで茂樹に抱かれた。
 
 


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