からふる。~第10話~
「あんまりじろじろ見るな」


「あっ、ごめんなさい」


「なんだよ、謝ってばっかりだな。話あるんだろ?さっさと話してくれ」



いざ話すとなると何を言いたかったのか分からなくなる。


2日間を思い出してみて、私の謝罪すべき点はあの不法侵入事件だけのような気がする。


それだけでも謝るか。



「あの...すみませんでした。昨日の不法侵入は私の確認ミスでした。以後気を付けます」


「えっ?それだけ?」



はぁ。


どんだけ謝罪させる気ですか、この人は。


あとは何だっけ?


えっと確か...。



「大声出してお休みの邪魔をしてしまい、申し訳ございませんでした。以後気を付けます」


「いやいや、それはいいんだよ。おれに言いたいことってそれだけか?」


「はい、そうです」


「マジで?」


「マジ、です」


「...よっしゃー!」



うえ、うええ!


な、な、何故抱きつく?!


なんでこんなに嬉しがってるの?



「離して下さい」


「あ...ごめん。嬉しくて、つい」


「嬉しい?」


「いや、紫雄に追い出されるかと思ってたからさ、ちょービビってたんだよ。そしたらそんなんじゃなくて良かった。ふう、一安心」



なんだ。


それにビビってたのか。


変だけど、意外と面白い人かも。



「オレも謝る。突然キスしたりして悪かった。練習とか言っちまったけど、お前...いや、さあやで良かった」


「えっ?」


「なんならまたしたい」


「からかわないで。私そんな易々しい女じゃないから」


「はいはい。ジョーダンだよ、ジョーダン。さあやは真面目なんだな」



真面目ではないと思う。


真面目だったら勉強をちゃんとやって特待生になって学校に居続けたと思うもん。


そういう悪魔くん、じゃなくて黒羽くんの方が真面目じゃない?


律儀に私の名前呼んでるし。



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