【番外編5/3UP】その王子、はらぺこ悪魔につき。
驚くのも無理はない。
まさに一瞬の出来事だった。
先輩たちに取り押さえられていたわたしが、セロの腕の中におさめられるまで。
それはとても人間に追えるスピードではなかった。
セロが、床に散らばった髪を見つめたあと、視線をわたしに向けてくる。
「みないで……」
きっと、セロからしたら
わたしの髪型の変化なんて些細なことで
味が落ちなければたいして問題ない。
そうわかっていても
こんな姿は見られたくないよ。
セロの内側から黒いものを感じる。
いつもの腹黒さとはちがう、なにかを。