最強の魔女と策士な伯爵~魔法のランプをめぐる攻防~
魔法のランプを作った結果

 場所:ブラン家地下研究所
 時間:深夜

 ブラン家の地下深くにはメレが研究に使う部屋が多数存在する。
 光の届かぬ場所、さらに時間帯は深夜。そこでは秘密裏にかつ定期的に行われている集会があった。

「みんな、集まってる?」

 燭台の灯りが揺れ、薄暗い部屋に雁首そろえているのはメレディアナという魔女と契約を交わした者、あるいは彼女を慕う者ばかり。獣、精霊、人、種族は様々だ。メレディアナを中心に集まる彼らにとって異種族という壁は存在しない。

「それじゃ、メレ様を幸せにし隊、定例会議を開催するよ」

 進行役は彼女と尤も付き合いの長いノネット。体の年齢こそ十九歳で止まっているが、最近ピーッ回目の誕生日を数えた主に浮いた話の一つもないことが悩みの種である。

「このままではメレ様が、我らの主が行き遅れてしまう! メレ様に幸せを! 僕たちで手助けをしてあげないと。合言葉はぁ――」

『メレ様を幸せにし隊!』

 一斉に台詞が重なり部屋中が沸く。

「賛成だ!」

「ええ、わたくしも!」

「メレ様に恩を返したい!」

 飛び交う歓声をひとしきり堪能してから静粛にとノネットの手が掲げられる。

「僕たちで良い人を見つけてあげよう」

 一同は重々しく頷いた。それが容易ではないことが即座に想像出来たからだ。
 そこからはメレの好みの異性はという話題が延々と続いた。

「メレ様の好みは、先日つくったランプの精のような顔立ちに違いない。あとカガミの奴とかな。線が細くて、濃くない顔たちが好みと見た!」

「確かに、ああいうのが好みなんだろうね」

 納得したノネットはカガミを見遣る。尤もらしい理由をでっちあげて主から使用許可を得てきたものだ。

「特別顧問のカガミさん。どこかにあんな人いないかな?」

 すぐに険しい表情が浮かべられた。

「うーん……。ちょっと見てくるけど、あんまり期待するものじゃないよ? あのメレに釣り合うって大変なことだから。見た目だけじゃない、障害は山積みだ」

「わかってる。それでも僕たち覚悟の上なんだ!」

 力強い発言はカガミに衝撃を与えるには十分だった。まるで鏡が震えるような衝撃だったと後に彼は語っている。

「お前らっ! くっ……惚れたぜ!」

「え、あれ、カガミさん? なんか口調変わってますけど、そんなにテンション高い精霊でしたっけ?」

「どうやらこのカガミも覚悟を決めないといけないようだ。特別顧問? いや、このカガミもメレ様を幸せにし隊に入れてくれ! 全力で探してくる。お前らちょっと待ってろよ!」
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