Keeper.ll





砂の音が聞こえる。


後ろを振り向きながら、腕を伸ばす。


バトンの無機質な固さが手のひらの上に乗せられた。



高揚感。


それをしっかりと握って、走り出す。



駆ける。砂が鳴る。


風が吹く。体が持っていかれそうな風。


髪の毛が後ろでグワンと揺れる。


ああ、楽しい。


その風になったような感覚が、バイクに似ているんだ。


スピードは全然違うけれど。




「早ぇ!」


誰かの声が聞こえた。


「里香ちゃん!」


千歩の声が、聞こえた。


口角が上がる。


一瞬の出来事だ。


ああ、楽しい。




僅かな時間。100メートルしかないこの距離だ。10数秒。もっと短いかもしれない時間。


バトンが、次の人の手に渡った。



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