Keeper.ll





ぶるり、と悪寒が走って身震いする。どうしてそうも感情なく人を壊すことができるのだ。


何してるの、と問うべきか。ヒロインならば言うだろう。辞めてあげて、と。その人は味方でしょう、と糾弾するのだろう。

だけど今、そんなことをしたら?


きっと

何をしてるの?と聞けば、暇つぶしだと。

仲間でしょう?辞めてあげて、と発すれば、君が代わりになってくれるのかと口の端を愉快そうに持ち上げて笑うのだろう。


先程仲間のことを汚いと言っていたけれど、霧雨だってとても綺麗とは言えないような笑い方をする。


「うーん、永富が居ないんじゃつまらねぇと思ってたけど。霙ちゃん、面白そうだね。」


ユラリ、と言うよりもダラりと表現する方が的確な気がするオノマトペを発したように、体の力を抜きながら立ち上がる霧雨。


何故かとてもおぞましくなって半歩足を引いた。いわゆる半身と言う形になる。武道の構えだ。


「俺と、アソンデカナイ?」


そう言いながらいつの間にか先程のだるそうな立ち上がり方とは違って、しっかり足を地面につけている霧雨は、いきなり殴りかかってきた。


飛んできた拳を何とか見切り、左に避ける。それと同時に反対の方に手をいなしながら。


相手の攻撃を避けさせるために触れた手がジンジンする。ああ、男の人は体の力が強いと言うのは本当なのだと再確認する。

単純な力較べになれば圧倒的にこちらが不利となるだろう。

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