Keeper.ll
霧雨は体をひねって、更に私の頭上に腕を横に振る。頭上と言ってもそれは結果論で私がただ避けたから。
しゃがんで霧雨の足を振り払うように蹴りを入れようとすれば案の定避けられた。追撃するように地面に手を着いたまま、先に攻撃した地面に着いている方の足を軸として、反対の方の足で顎の当たりを狙う。
「チッ、さっすが、強いね、。アハハ、そこら辺の雑魚とは全然違う。なー、もっと遊ぼうよオ。」
『いやよ、私は早く帰りたいの。寝たいの。』
「えー、そんなに寝たいならさ。俺が永遠の眠りにつかせてあげよっか?」
『趣味悪いわね!』
ここがまだ人目につかないところでよかった。多分、こういうところだからこそ、こいつらは待っていたのだろうけれど。
『そういえばさっき、永富がいなくてつまらないって言ってたけど。永富襲うつもりだったんだっけ!?』
語尾が少し上がったのは仕方がないだろう。ここまで早く蹴りを入れたのは久しぶりなのだから。
「グッ、チェッ、頬切れた。
ん〜、んふふ。どう思う?」
『分からないから聞いてるのよ。』
「あー、まァ〜たすぐそんな怖い顔するー。ねエ 笑ってって言ってるじゃァ〜ん?ほら、笑えよ。」
『笑えよって、、、それで?どうなのよ』
執拗いなぁ、と霧雨は言ったあとに面倒くさそうに告げた。
「そうだよ?一人一人狙って言って最後には全部、ぶっ壊すの。」
俺ね、壊すの得意なの。だから約束したんだァ。そう心底楽しそうに、嬉しそうに言った男の笑顔に既視感があった。
霧雨とよく似た表情をする人間。霧雨を通して誰かを見ているような、そんな感じがした。