Keeper.ll



『まだ相手がどの族で目的が何かすら分からない。それは今から時友に調べてもらうつもりでもいる。』

みんなが聞いていてくれるのがわかる。空気が張りつめる。

当たり前に、周りには見知った顔、目の前には緊張したような顔。顔は一人一人違うものの、特定のシチュエーションでする表情なんて人間みんな同じようなものだ。


現に、Kでも注意喚起をする時はそんな感じだった。私も緊張する側だったが。緊張、焦燥、恐怖、…数え切れないほどの感情の洪水だろう。



『相手の名前は霧雨薄』


そこで一旦区切る。時友がパソコンを打ち始めた、キーボードが高速で叩かれる音がしている。


『身長はかなりデカイなって印象。195位はあるだろうな。それによって生み出されるパワーはそこら辺にいる男が殴ってきた時よりも強いでしょうね。現に鍛えてもいるだろうから。

多分、この中で軽傷で逃げ切れるのは幹部の中でも……少ないだろうと言うくらいには強いという印象を受けた。』


順々に説明をしていくが、静かだった空間に最後に投げられた言葉は大きかったようで少しざわつく。


『油断して間合いを許したらまぁ、間違いなくアウトだと思って欲しい。私もいっぽ間違えれば危なかった。それに相手はどんな凶暴な行為も簡単に出来るほどの精神異常者だと思う。』


そのセリフを追記すれば完全に場が凍った。


千歩の手が震えているのをそっと握る。千歩の守られるだけじゃ嫌だと頑張る姿が好き。そういう人には手を貸したくなる。ただ少し優しすぎるのが難点、なのだろうか。


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