Keeper.ll
『クソッ…!待てッ…!!!』
走り出そうと足に力を込める。人が驚いたようにこちらを振り返った気配がしたけれどそんなのは瞳には映らなかった。
ハチマキが靡く、体操服の袖の裾が揺れる、足に力が入って勢いよく砂を蹴った。届きもしないというのに願うように腕を伸ばす。
「遅かったじゃない、探したわよ…って、何?何かあったの?」
あいつは私の、宿敵。
『の、希望さん!』
絶対殺さなきゃいけない相手。
後ろからはたと声をかけられ、思考が落ち着きを戻す。あいつへと目を向けたけれどもうそこには姿はなくて。
いや、当たり前だ。あいつは正門付近に、私は直線上にいたけれど広い運動場を挟んでいたのだから。だから正門から出ていってしまえば姿は見えなくなるだろう。
第一、私じゃなければあいつの事を目視は出来なかったはずだ。ハッキリとこの目に姿を移すことは、出来なかったはずだ。私はほかの人よりも目がいいから。
多分あいつはそれを知った上で接触と言うには遠すぎる今の行動をしてきた。殺気、というには距離が開きすぎているそれは私でなければ気が付かなかったはずのもの。
やだよエスパーになんてなりたくないし、なったとしてもあいつなんて嫌だな。
ああ、早く地獄に落としてやりたい。