ウチの塩が切れました。
────その日を境に、私の生活は一変した。
今までただのモブキャラだったのに、あっという間に注目の的。
他のクラスの女の子たちが(男の子も来るけど)わざわざ教室の前まで見にくるほど。
一気に有名人になってしまったのだ。なんてこった。
『えっ、ごめんなさい』
これが、私があの日出した答え。
ほとんど反射的だった。だって、あまりにも現実味がなかったから。
それに、塩崎くんはとんでもないイケメンだし、
嫌いというよりむしろ好きだし、
私に恋人がいるわけでもないんだけど───
塩崎くんは、あくまで“推し”なだけだから。
恋愛対象ではなく、ただひたすらに拝み倒したいだけの存在。
私なんかが付き合うなんて、論外中の論外。私は善良な塩崎くんファンなのだ。