ナルシス
最後の夜、食事をして部屋に戻ると、徹は意外なことを言った。
 

「ユーリ。お店が増えたから、本社を作る予定なんだ。パパや朗は本社で全部のお店を管理するようになるよ。そうなると昼間の仕事になるから。ユーリと、もっと一緒にいられるよ。」


徹の言葉に夕璃はまた驚く。光子は優しく笑って、


「全部のお店に責任者を決めるから。ママももうお店には行かないよ。」

と夕璃に言う。
 
「本当?夢みたい。」

夕璃は涙を溜めて答える。



今までの寂しさが全部消えていく。

もう何も不安はないと思った。
 

「ユーリが寂しいのを我慢してくれたおかげで、パパのお店全部、順調だからね。」

徹の言葉に夕璃は涙を溢れさせてしまう。

光子の胸に抱き付いて、号泣する夕璃。
 


「ユーリ、もう大丈夫だよ。パパとママはいつもユーリの側にいるからね。」

夕璃の背中を撫でながら、光子は優しく言った。

しばらく光子の胸で泣いた夕璃。
 
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