異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「お前はどうなんだ。俺のこと、どう思ってる?」

 ずっと、見ないふりをしていた気持ち。アルトさんは王子で自分は庶民だから、こんな気持ちを抱くこと自体、罪だと思っていた。
 でも、今なら言える。

「す、好きです……! アルトさんのことが、大好きです!」
「ほ、本当か?」

 自信満々で聞いたと思ったのに、アルトさんは驚いた顔で私を見つめた。

「は、はい……」
「や、やったぞー!」
「わ、わっ」

 大声で叫んだと思うと、私をお姫様抱っこしてくるくると回り始めた。必死でアルトさんにしがみついて、気持ち的にも視界的にも、目を回さないようにするので精いっぱいだ。

「殿下、騒がしいですよ! どうしたん……」

 店の外で警備をしていたベイルさんが、扉を開けて入ってくる。――が、私たちを見てハッとした表情になると、「失礼しました」と告げてそのまま扉を閉めた。

「べ、ベイルさん、待って! ……ど、どうしましょう。誤解をとかないと」
「何を言ってるんだ、誤解じゃないだろう」
「で、でも。王子が庶民と……だなんて、まわりに知られたら」
「かまわないさ。土地の改良だってできたんだ。身分制度の改良だってやってやる。獣人は安心して働けて、王族も貴族も庶民も関係なく結婚できる国に、俺はする」
「アルトさん……」

 感激して、瞳がうるんでくる。しかしアルトさんの言葉を反芻して、ん?と気付く。

「ちょっと待ってください。今、結婚って言いました?」
「嫌なのか?」
「い、嫌じゃない、です……」

 抱き上げていた私の身体を、壊れやすいものを扱うようにそっと床に下ろす。
 私ってこんなに単純だったのかな。それだけでこの人の誠実さがわかって、もっと好きになってしまうだなんて。

「じゃあ、決まりだ。お前はずっと、俺のそばにいろ」

 アルトさんが私の顎を持って、上を向かせる。思わず目を見開いて凝視してしまうと、「こういうときは目を閉じるものだろ」と苦笑された。

 これから何をされるのか理解しながら、目を閉じる。

 ドキドキと高鳴る心臓の音だけが響く中、アルトさんの唇が私の唇に重なった。
 それは、今まで作ったどのスイーツよりも甘いキス。

 たっぷり時間をかけた優しい口づけのあと、名残惜しそうにアルトさんがそっと身体を離す。
 そして――。

「……甘い」

 照れた顔で、そうつぶやいた。



 ~END~
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