カナシミモンスター
自分の姿形と違うヤツがいる、というのは子どもの世界にとっては、十分に仲間はずれにする理由になる。


幼稚園に通い始めてすぐ、俺は目の色が気持ち悪いと同じ組の子たちから仲間はずれにされた。


俺の肌の色はみんなよりも白くて、髪の色や瞳の色は茶色がかっている。


特に瞳は透き通るような茶色で、瞳の奥はエメラルドのように緑がかっていて、祖母と母のそれとよく似ていた。色白の子や髪の毛が茶色い子なら周りに何人かいたけれど、俺みたいに緑色の()をした子は一人もいなかった。


「私達の目の色はね、ヘーゼルブラウンって言うんだよ。ヘーゼルナッツの色だね。広海(ひろみ)の目は、ブラウンの奥に綺麗なエメラルドグリーンが広がっていて、まるで海のように綺麗でしょう?……いい、広海。人と違うっていうのはね、悲しむことじゃないの。自慢できる事なのよ。自信を持ちなさい。心を悲しみでいっぱいにしちゃダメよ。心に悲しみが広がるとね、人に優しくできなくなるの」



「どうして、ぼくの目は、みんなとちがうの?」と泣いていた俺に、祖母は何度も言葉を尽くし、時に難しい言葉も混ぜながら、優しく諭してくれた。


祖母はこんな風に、亡くなる最後まで祖父に愛された自分と、その瞳の色に誇りを持っていた。


< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop