Bitter Sweet
「咲良、やつれてるよ?」


「そう?」


「うん、頬が痩けてる、やっぱ大変?」


「うん!」


大きく頷いた。


「大分はっきり言うのね」笑


私は4ヶ月ぶりに絵梨花と会っている。


いつも薄いメイクなのに、アイメイクも濃いし、口紅は赤いし、彼氏でも出来たのかな?


でも、ほぼ毎日絵梨花や4人でのチャットをしているけど何気ない日常報告ばかり。


誰も蓮斗の話はしてこない。


みんな気を使っているんだろう。


「私、ついていけない」


「教師が弱気で生徒どうすんのよ!」


「この3ヶ月の間、テスト2回、模試3回、それに先週は体育祭あったし、夏休みも補習入ってるし、またテストあるし、その次は修学旅行…またテスト、また模試、またテスト…」


「咲良、もういいわ、私まで弱気になって来た」


「ごめん」


「こんなに大変なら、恋する時間もないわね」


「恋」


その単語を聞いただけで蓮斗を思い出す。


4月なってすぐは授業する度に、放課後、点検で体育館に行く度に蓮斗を思い出していた。


でもあまりにも忙しくて蓮斗のことは忘れていた。


「咲良のこと考えて言わなかったけど、今の咲良の顔を見たらまだ蓬莱くんを忘れてないみたいね」


「………」


「大丈夫よ、蓬莱くんは相変わらずトップだしバスケもエースでキャプテンをしているし、私が担任としてばっちし見てるから安心しなさい」


「絵梨花、蓮斗の担任だったの!?」


「そうそう、蓬莱蓮斗くんは2-3にいます〜」


「そうなんだ、絵梨花が担任だとは予想つかなかった」


「でしょ?それに……」


「なに?」


「たまに聞いてくるのよ、咲良のこと」


「へっ?」


ビールを飲みながら変な声が出てしまった。


「咲良は元気?とか咲良に電話したいけど迷惑だよなとか私に言ってきたことがあったわよ」


「そうなんだ…」


「でもそれは4月の話で今はないかな、今は部活熱心って感じ」


「そっか、てか、絵梨花、メイク濃くなったよね?」


「気づいた〜?私彼氏できたの!」


「やっぱりね!!おめでとう、どこの誰?」


「身辺調査みたいにいきなり細かく聞くの怖いよ」笑


「ごめん」笑


「咲良の高校の十坂航先生」


「いまなんて言った…?」


「そりゃ咲良は知ってるよね、黙っててごめんね、直接報告したかったの」


「私のクラスの副担任だよ……」


「えーーーーー!?!?」


「なんで私の周りではこんなに関係が作られるの〜」


「すごいわね…」


「どうやって知り合ったの?まず十坂先生は33歳とか言ってたけど…」


「咲良、知らない?」


「なにを?」


「十坂先生、離婚して子供3人いるの」


「へ〜、ってえー!!!」


何度も視線が私と絵梨花のテーブルに向く。


大きい声を出そうとしなくても出てしまう。


「なんか、23歳の時に授かり婚してそこからもう2人を産んだけど、夫婦仲があまりうまくいってなかったみたいで30歳の時に離婚して親権が十坂先生にあるんだって」


十坂先生とはプライベートな話をあまりしたことがない。まず飲み会にも来たことがない。理由はお子さんだったのか。


「それで、私、地理教師で地理の先生方が集まる会合みたいなのがあって私が出張したところに航くんがいたわけ。それが出会い。それで、連絡先を交換して子供もいるけど、付き合ってほしいって告白されて現在に至る。」


「まず十坂先生が子供いるのにびっくりした」


「でしょ、全員男の子でやんちゃだよ〜でも可愛い、1番上はもう10歳で私が航くんの家に行く時に教えたりして楽しいよ」


「それでこんなにぱっちりメイクを」


「それは、今までほぼスッピンみたいなメイクだったからたまには派手な絵梨花ちゃんも見たい〜って言うから今回だけね」


「そうなんだ」


「私は航くんとは本気。私も子供も愛してくれる、遠距離恋愛なのに全然遠距離恋愛だと感じないの、しかも航くん、メガネを外すとかっこいいんだよ?学校でちょっと真面目な顔しないとって理由で眼鏡かけてるだけなんだって」


「そうなの?通りであのメガネに違和感感じてたんだよね」


「だろうね、私はあのメガネずっとかけてて欲しい、じゃないと航くんはモテてしまう」


「確かにそうだね」


「よし、久しぶりに会ったし、思いっきり飲もう!」


「そうだね!」


明日からはジメジメとした夏を忘れるような慌しい夏が始まる。
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