ノクターン
その時、ドアがノックされて 智くんのご両親が 部屋に入ってきた。
お互い、自己紹介。智くんのお父様は 本当にできた人で。
普通の父親の顔を 崩さない。
私の両親も 徐々に緊張が取れてくる。
和やかな雑談が続いた後、
「こんなに良いお嬢さんと、智之との結婚をお許し頂いて 本当にありがとうございます。」
智くんのお父様は 丁寧にお礼を言ってくれる。
私の父も答えて、
「こちらこそ。何もできない娘ですが、どうぞよろしくお願い致します。」
何となく、みんなが神妙な気持ちになる。
「本当に、何の家事も教えていなくて。恥ずかしいです。」
と母が言ったあとで
「お姉ちゃん、ずっと勉強ばかりしていたから。仕方ないんです。」
と、なぜか妹が言い。
私は ぷっと笑ってしまう。
「美奈ちゃんに言われることは、ないかなあ。」
場は、一瞬で笑いに変わった。