ノクターン
21

子供の頃の夏、智くんと散歩していて ふと紛れ込んでしまった教会。

石造りの変わった建物で。

子供の私達は、訳もわからずに 中に入って行った。


静かに流れる讃美歌に誘われて 奥まで入ってしまう。

そこは、あまり大きくない礼拝堂で、結婚式の真最中で。
 


全然知らない人の結婚式なのに、私達は神妙に見入ってしまう。

礼拝堂の入り口の隙間から、外人の神父さんの言葉に聞き入る。



どのくらいの時間結婚式を見ていたのだろう。

子供の感覚なので、長かったようにも、短かったようにも思える。
 


「行こう。」


と智くんに言われた時、私達はいつの間にか 手を繋いでいた事に気づく。

私は、いたずらをして逃げる子供のように 智くんに手を引かれて走る。


礼拝堂から離れた時、ほっとして 繋いだ手を離す。

見つめ合って笑う。

初めての 甘酸っぱい感覚だった。


智くんが5年生、私が3年生の夏。
  


「それなら、思い当たる教会があるかも。」

智くんが 言ってくれる。
 

「でも、本当に 軽井沢でいいんでしょうか?」

私は、智くんのご両親を見て 確認する。
 


「二人が良いなら良いのよ。一生に一度の事だから。あなた達の希望が、最優先よ。」


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