ノクターン

夕方、智くんと待ち合せて 結婚指輪を買いに行く。

今回もハリー・ウィンストンで。

婚約指輪と相性の良い指輪を選ぶ。

また、恐ろしく贅沢な買い物をしている。
 


幸せな不安で 智くんを見ると、優しく頷いてくれた。

『大丈夫。何も心配しないで。』

とその目は、言っていた。

今回は、裏に日付とイニシャルを刻んでもらう。

受取りは後日にして店を出た。
 



「サイパンのチケット取れたよ。」

食事をしながら、智くんは言う。
 
「わあ。よかった。」

私が笑顔で言うと、智くんは 甘い瞳で私を見る。

私は、やっぱり頬を染めてしまう。
 


「27日に出発だよ。4泊5日だから 新年には、軽井沢に行こうね。」
 

「ありがとう。楽しみ。旅行の準備しないとね。智くん、スーツケース持っている?」
 

「松濤にあるから、後で取ってこよう。水着も、夏物も。」
 


「私、水着持ってないよ。」
 

「大丈夫。サイパンに売っているからね。向こうで買えばいいよ。麻有ちゃん、泳げる?」
 


「25メートルは泳げるよ。」私が答えると
 

「小学生か。」


と心地よい声で、笑った。


< 133 / 270 >

この作品をシェア

pagetop