ノクターン
夕方、智くんと待ち合せて 結婚指輪を買いに行く。
今回もハリー・ウィンストンで。
婚約指輪と相性の良い指輪を選ぶ。
また、恐ろしく贅沢な買い物をしている。
幸せな不安で 智くんを見ると、優しく頷いてくれた。
『大丈夫。何も心配しないで。』
とその目は、言っていた。
今回は、裏に日付とイニシャルを刻んでもらう。
受取りは後日にして店を出た。
「サイパンのチケット取れたよ。」
食事をしながら、智くんは言う。
「わあ。よかった。」
私が笑顔で言うと、智くんは 甘い瞳で私を見る。
私は、やっぱり頬を染めてしまう。
「27日に出発だよ。4泊5日だから 新年には、軽井沢に行こうね。」
「ありがとう。楽しみ。旅行の準備しないとね。智くん、スーツケース持っている?」
「松濤にあるから、後で取ってこよう。水着も、夏物も。」
「私、水着持ってないよ。」
「大丈夫。サイパンに売っているからね。向こうで買えばいいよ。麻有ちゃん、泳げる?」
「25メートルは泳げるよ。」私が答えると
「小学生か。」
と心地よい声で、笑った。