ノクターン
リビングには お兄様夫婦が来ていた。
「はじめまして。麻有子です。宜しくお願い致します。」
私が挨拶をすると、
「お噂は、かねがね。」とお兄様が笑う。
戸惑って、智くんを見る私に
「ごめんね。沙織です。こちらこそ、よろしくね。」
とお兄様の奥様が言ってくれる。
初めて会う、智くんのお兄様は 智くんよりも荒削りな感じの 明るい人で。
きっと 居るだけで場の雰囲気を変えることができる人だろう。
将来、経営者としては、ぴったりだと思う。
磊落で カリスマ的なオーラがあった。
奥様の沙織さんも 大らかで物怖じしない雰囲気の、落ち着いた美人で。
やっぱり 社長の奥様にはぴったりだと思う。
素敵なご夫婦だった。
「ちょっと、兄貴。麻有ちゃんいじめないでよ。慣れてないんだから。」
智くんが、照れながら庇ってくれる。
「うわ。本当に智之 メロメロだ。」
とお兄様は笑う。