ノクターン
「あのね。麻有ちゃんは 智之さんの初恋の人で、智之さんは “ ぞっこん ” だって聞いていたのよ。」
お姉様が、説明してくれる。
「やだなあ。おふくろでしょう、そういう事 言うのは。」
「いいでしょう。本当の事なんだから。」
と私達のコーヒーを持ってきたお母様が言う。
「ねえ、麻有ちゃん。」とお母様に振られて
「そんな事ないです。ぞっこんなのは、私の方です。」
私は何を言っているのだろう。
みんなが声を立てて笑い、私は 頬を染めて俯く。
「ね。熱々でしょう。」とお母様が言う。