ノクターン
35

サイパンの海に入る 最後の日。


朝のボートで島に渡った私達は のんびり海遊びを楽しむ。


遠浅で綺麗な水の中 二人で浮いたり、潜ったり。

体が冷えると パラソルの下で温めて また海に入る。
 


島のビーチは 人が少なくて 砂も真っ白で。


智くんは 冷えた私の体に 砂を掛ける。

足の方から、徐々に体まで。
 


「温かいね。」

と言う私のビキニの中に 砂を入れる。
 
「キャー、止めてー。」

と言う私に 智くんは ケラケラ笑う。
 


「もう。砂だらけ。」

私は そのまま海に入る。



人のいない奥まで ゆっくり進んで 胸まで海に浸かる。


そして水の中で ビキニを外し ビーチにいる智くんに 振って見せた。

智くんは すぐに気付いて 海に飛び込む。
 


「もう。麻有ちゃん。」


泳いで、私の所に来た智くんは 私を強く抱きしめる。
 

「驚いた?」

水の中 ビキニを付けながら 私が言う。
 
「魚に見られたよ。」

智くんは そう言って私にキスをした。



なんて自由で。なんて幸せで。

二人の愛だけがあって。
 

「来年も、連れてきてね。」

水の中 智くんに抱かれながら 私は言う。
 
「何回でも来ようね。」
 
「サイパン、大好き。」


私達の旅行は、満足感だけを残して過ぎていく。
 

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