ノクターン
37

翌日、私達は 軽井沢に向かう。


新年の挨拶と、サイパンのお土産を渡しに。


でも、私達は タイムカプセルが気になっていた。

車の中の話題も その事になる。
 


「どの辺に埋めたか 覚えている?」智くんに聞くと
 
「確か バスケットゴールの下じゃなかった?」

智くんも 記憶を探っている。
 

「掘れるかな。雪で埋まっていたら無理かも。」


例年、お正月頃は 根雪にはなっていないと思いながら。

ちょっぴり不安で。
 


「俺達、覚えているよりも ずっとたくさん 一緒に居たんだね。」

智くんは、感慨深げに言う。
 

「ほんと。毎日、遊んだもんね。」

私も、何かジーンしてしまう。
 


「麻有ちゃんと遊ぶの 楽しかったんだ。麻有ちゃん、小さいのに必死で俺に付いて来て。可愛かったよ。」

「智くんも。いつも私を庇ってくれたし。林の中歩く時も 私を気にして 待っていてくれたり。優しかったよね。」
 
「麻有ちゃんだからだよ。」
 
「私も。智くんだから。何か、涙出てきそう。」



最近、笑ってばかりだったけれど。

根底にある優しさに 改めて気づく。
 


「泣かないでね。お父さんとお母さんに 俺がいじめたみたいに 思われるからね。」


智くんは、私の手を握ってくれた。
 

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