ノクターン

その時、私は やっと思い出す。


お金持ちになりたいと 思ったことは、

智くんと一緒にいるため だったことを。


東京に帰る智くんと、同じように生活がしたかった。


お金持ちになれば いつでも 智くんと一緒に居られると思ったから。
 


私の夢は、どこかで歪んで “ お金持ち ” だけが残ってしまっていた。



成長するに従い お金持ちになっても 智くんと一緒にいられないことを知る。


その寂しさを埋める為に 勉強をしていたのだと。
 


「麻有ちゃん。20年前から ずっと愛しているよ。会えてよかった。絶対、離さないよ。」


私を抱く智くんの腕に、力がこもっていく。
 

「ありがとう。智くん。ずっと一緒だね。」




だんだん呼吸が落ち着いて、私も智くんに言う。

温かいキスをして、私達は別荘を後にした。
 

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