ノクターン
40

翌日は、智くんに勧められて 入籍の日の 白いワンピースを着る。
 
「いいね。とても良く似合うよ。」

満足気な智くんの笑顔が嬉しい。


日焼けが 私を幼く見せて あどけない花嫁になっていた。
 


「ドレス、二人で決めたかったんじゃないの?」

智くんは、気を使って聞いてくれる。
 

「そんな事ないよ。大切な物だもの。みんなに見て頂いた方が 安心だよ。それに私 みんなといるの大好きだから。」
 
「ありがとう。」

と智くんは、私の頭を優しく撫でてくれた。
 

智くんの車で お父様とお母様を迎えに行き 私達は 青山のブライダルハウスに向かう。

お兄様達のマンションは、そこから近いからと お店で待ち合せてある。
 


「何か、懐かしいわ。あの頃の新鮮な気持ちを 思い出しちゃう。」

ベビーカーを押して歩いてきた お兄様とお姉様が言う。
 
「あの頃の沙織は、優しかったなあ。」お兄様の言葉に、
 
「ちょっと。今でも優しいわよ、私。」とお姉様が睨む。
 

「母は強し、って言うけど。最近の沙織、おふくろに似てきたよ。」


お兄様の言葉に、みんなで笑う。
 

< 206 / 270 >

この作品をシェア

pagetop