ノクターン

「あ、そうだ。俺、昇進するよ。今月から主任になります。」

智くんが言う。


結婚式の話題が、一段落したあとに。
 

「マジか。」とお兄さんの声に

智くんと私は 微笑み合ってしまう。
 

「おめでとう。頑張ったな。」

お父様は 企業人の顔になる。
 


「俺 去年の秋以降 取引先に可愛がってもらえるようになってさ。色々、業績上げたから。」

智くんは、笑顔で私の方を見る。
 


「嬉しいわ。おめでたい事尽くめね。」

お母様も 喜んでくれる。
 


「智之の歳で主任って、早い方だろう。」

お兄様に聞かれて、
 

「同期入社では 一番だよ。かなり明確な実績出したから みんな納得していると思うけどね。」

ちょっと得意気な智くん。
 

「麻有ちゃん、すごいわね。」お姉様に言われて
 
「はい。自慢の旦那様です。」と私は笑顔で答える。
 


「可愛いでしょう。頑張り甲斐があるんだよ、俺も。」

智くんも ニコニコ笑う。
 


「智之、変わったからなあ。今の智之なら 確かに信用されると思う。誠実な感じするし。いいなあ。大手商社のエリートかよ。」

お兄様の言葉に
 
「悪かったね、中小企業で。」とお父様が言う。


また、みんなで笑い。


温かく 満ち足りた幸せ。
 
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