ノクターン

「麻有ちゃんと会ってから 智之の流れが変わったのね。」

お母様は、しんみりと言う。
 
「今思うと 離れていた時間が 本当に可哀そうだったね。」

お父様も頷く。
 


「でも。だから今に、すごく感謝できて。大切に思えるのかなって。」

私は、遠慮がちに言う。
 


「麻有ちゃん、本当に良い子ね。」

お母様の笑顔は温かい。
 
「でしょう。可愛いんだよ、本当に。」

智くんが 笑顔で言う。
 


「智之 気をつけろよ。子供ができると 怖くなるからな。」

お兄さんが 小声で言う。


でも、みんな聞こえていて。
 
「パパ。」とお姉様は言い。


みんなの笑い声が高くなると 樹くんもケラケラ笑う。
 


寂しい時間があったから この素敵な家族と こんなに幸せな時間を持てる。

これからは この幸せを壊さない為の 努力をしよう。


家族みんなの、幸せを。 
 


明日が仕事始めだという、お父様とお兄様に合わせて 早めに帰ることにする。


私達は あと一日お休みだと言うと
 

「いいなあ、大手は。社長、わが社も休日を見直しましょう。」

とお兄様が言う。
 

「いいよ。大手並みの業績を上げてくれればね。」

とお父様に言われて、がっくりするお兄様に笑い。
 

松濤に着いて お父様達を降ろすとき、
 
「とても良いお正月だったよ。麻有ちゃんありがとう。」

とお父様が言う。

その後ろで お母様も笑顔で頷いている。
 

「こちらこそ ありがとうございます。私も、最高のお正月になりました。これからも ずっとよろしくお願いします。」

突然のことで、私は とても驚いてしまう。


感謝するのは、私の方なのに。

ありがとうと言ってくれる。


こんな両親だから。この家族だから。


智くんを こんなに好きになったのだと。

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