ノクターン

「わあ。素敵。」と言って見ていた妹。

スマホを母に渡し 父と一緒に見る。
 

「もっと素敵になるのよ。これは、ベースになるドレスだから。」私は言った。
 

「何か、涙出そう。今日の洋服見た時も ちょっとジーンとしたけれど。本物は 全然違うわ。麻有ちゃん、良かったわね。」

母の言葉に みんなが少し しんみりする。
 


「みんなのおかげです。私、生まれてきて良かった。」


私は、心から感謝していた。



智くんのご家族に。

私の家族に。

一番 智くんに。
 


「やだ、麻有ちゃん。本当に涙出ちゃう。」

そう言ったのは、智くんのお母様で。

私の母は 俯いている。
 

「もう。結婚式の前から これじゃあ、当日が心配だよ。」

お兄様が 明るく言う。
 

「大丈夫です。涙でドレスを汚したら 父に綺麗にしてもらうから。」私も明るく言う。
 

「任せろ。」

父は笑顔で答えたけれど 目は赤く潤んでいた。
 

「これからは みんなで軽井沢に来られるね。暖かくなるから ちょうど良いよ。」

お父様が言うと、
 

「わあ。楽しみ。樹も いっぱい遊ばせてあげられます。」

お姉様は 笑顔になる。
 

「賑やかで、楽しそうだね。バーベキューとかやろうよ。」智くんが言う。
 
「あっ。私、炭を熾すのは得意なので。」父が笑いながら言う。
 

「別荘は、前日にお掃除して 風を入れておきますね。」母も、積極的で。
 
「本当に、良い家族ができたね。」

お父様はしみじみと言う。



みんなの笑顔が輝いて 私の胸をいっぱいにする。


幸せしか感じない。



あんなに嫌いだった軽井沢なのに。

今は 大好きになっていた。
 

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