ノクターン

「いつも近くにいて 麻有ちゃんを見ていたかった。麻有ちゃんが困っていたら 俺が助けたかった。俺も同じだったのに。」

智くんの言葉は みんなの胸に響く。
 

「私、子供過ぎて。自分一人では 何もできなくて。だから親を恨んで。反抗はしなかったけれど だんだん無口になって。勉強に逃げていたの。可愛げがなかったわ。」


私は なぜこんなに素直に 話しているのだろう。
 


「智之も全く同じ。そういう事だったの。」

お母様は しみじみと言う。
 

「子供だったから。自分では どうすることもできないからね。」

智くんは言う。
 


「二人 会えたからいいけどさ。会えなかったら どうしていたんだろう。」

とお兄様。
 



「多分、ずっとあのまま。どこかで 自分に折り合いをつけて 生活していくんだろうね。」


智くんは言う。
 

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