ノクターン
48

その後、松濤のご両親の家に行って 私の家族は その豪邸ぶりに 心底驚く。
 

「うわ。マジですごい家。」

妹は 声に出して言った。


父も母も黙っていたけれど 同じ思いを抱いていたと思う。


私も 初めてここに来た時に 感じたから。


『わかるよ。パパとママの気持ち。でも、大丈夫。お父様とお母様の優しい人柄が 私達をリラックスさせてくれるからね。』

私は 智くんと微笑み合って 玄関を開く。
 


「いらっしゃい。遠い所、ありがとうございます。どうそ。」

お母様は いつもの笑顔で迎えてくれる。


リビングに入ると お兄様達がいて。


ハイハイしていた樹くんに
 
「樹くーん」と妹が駆け寄る。


ケタケタと声を出して笑う樹君。

堅くなっていた父と母も 次第に寛いでいく。
 


リビングの飾り棚に 智くんと私の あの写真が飾ってあった。

最初に見つけたのは 母で。
 


「これ、智くんと麻有ちゃんよね。」

父と母は 立ち上がって 写真の近くに行く。
 

「すごく良い写真ですね。」

じっと見ていた父が言う。



丁度、お茶を運んできたお母様が
 
「でしょう。昔の写真を探していたら 出てきたの。この子達の披露宴に 使える写真が無いかと思って。自分で撮っておいて何だけど あまりにも良く撮れているから 飾ってみたの。」

嬉しそうに微笑むお母様。
 

「麻有子の服、これ私が作ったんです。美奈子とお揃いで。懐かしいわ。」母の言葉に
 
「そこか。」と父が突っ込み 大爆笑になる。
 


「違うわよ。すごく素敵な、ポスターみたいな写真に 見覚えのある服が 写っていたからびっくりしたのよ。」

母が慌てて言い、
 

「この写真の良さを 麻有ちゃんの服が 引き立てているからね。」


とお兄様が フォローしてくれる。




みんなが笑い 一瞬で和やかな雰囲気になる。
 

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