ノクターン

「しかし、良い写真だなあ。ウチにも一枚、頂けないでしょうか。」と父が言うと、
 
「そう言って頂けると信じて もうプリントしてあるの。」


とお母様は 奥から写真を持ってくる。


そして得意気に、お父様を見た。
 

「高村さんの分も プリントしたって言うから。聞いてからにしたらって言ったんですよ。」とお父様が笑う。
 

「それが、この勝ち誇った笑顔の理由ね。」

お兄様の言葉に またみんなが笑う。
 

「この、智くんの 真剣な目がいいね。」

父が 頂いた写真を手に言う。
 

「昔、こういう映画あったわよね。外国映画で。」

母が言うと
 
「小さな恋のメロディですよね。」

とお母様が答える。
 
「そうそう。綺麗なBGMでしたよね。」
 



「さすがに、俺達は知らないね。」と智くんが笑う。
 
「昔の話しだもんね。」と私も頷く。
 


「失礼しちゃうわ。」

と母が言い またみんなで笑う。
 


本当に 素敵な家族。



私は やっぱり智くんを 見つめてしまう。



必ず 智くんは私を 見つめ返してくれる。


優しい瞳で。



私は 泣きそうになるくらいの 幸せを感じていた。
 
 
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