ノクターン
50

私のウエディングドレスは、素敵に仕上がっていた。
 

シルクサテンの光沢。

広めに開いた胸元から肩紐は オーガンジーの花で覆われ可憐な雰囲気で。

スカート部分は段々に重なって 胸元と同じ花をたくさん散りばめて。

ロングトレーンは 思い切りボリュームがあり豪華で。
 

レースを使わずに サテンとオーガンジーでの仕上げは 重厚感があって清楚で。
 
担当の方に手伝ってもらい 試着する。

鏡に映る私は 初々しい花嫁だった。
 

「よくお似合いで。」

と言って、カーテンを開かれる。
 


「麻有ちゃん。」一瞬、言葉が途絶える。



みんながそれぞれの思いで 私を見つめていたと思う。



ここまでの 長かった道を。
 

担当の人は そんな家族を そっと見守ってくれる。


はにかんだ笑顔の私も。
 

「麻有ちゃん 最高に可愛いよ。」智くんの瞳は 潤んでいた。


多分、昨夜の父の話しを思い出して。
 


「本当。とても良く似合うよ。」

お兄様が言ってくれる。お姉様も頷く。
 

私の父と母は 何も言えずに 目を赤くしていた。


父は ずっと願っていたと思う。


叶わないとしても この日を 願わずにはいられなかったと思う。



だから、奇跡と言った。



パパ、ありがとう。


今は心から言えるよ。




パパが導いてくれたから 奇跡は起きたんだよ。


< 249 / 270 >

この作品をシェア

pagetop