ノクターン

「お姉ちゃん、バッグ開けてもいい?」

私が笑顔で頷くと 妹は嬉しそうに 丁寧に包みを開く。
 
「わあ。やっぱり素敵。」手に提げたり 肩に掛けたり。


そして、しばらく見ると また元通りに包んでしまう。
 


「使わないの?」私が聞くと、
 
「汚れちゃうじゃない。」妹は真剣に言う。
 

「やだ、美奈ちゃん。どんどん使ってよ。汚れてもいいじゃない。」私は言う。
 
「そうだよ。仕舞っておく間に 古くなっちゃうよ。」と智くんにも言われる。
 


「そうかな。じゃあ、早速 明日から使わせていただきます。」

とバッグの中身を 入れ替える妹。


私は智くんと 見つめ合う。

父と母も 笑って顔を見合わせる。



よかったと私は 心から思う。

これからは、もっと良い子になれる。

私が受けた愛を みんなに返そう。


こんなに幸せだから。
 


その夜 寝室に引き上げてから 智くんは私を強く 抱きしめてくれた。
 

「麻有ちゃん、ありがとう。小さな頃から俺の為に ずっと頑張ってくれたんだね。」
 

「智くんも、ありがとう。私を ずっと覚えていてくれて。私を選んでくれて。」



私達は 幸せな興奮に 身を任せてしまう。




智くんの胸に抱かれて 朝を迎えた私の頬には 涙の跡があった。

 
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