ノクターン
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4月最初の日曜日に 私達は 記念写真の前撮りをした。


急ぎで仕上げてもらった 白のドレス。

小物一式と智くんの衣装。

それは 前日に受け取ったばかりで。



そして お姉様が勧めてくれた和装の写真。

すべて披露宴をするホテルで 撮影してもらう。
 

「当日は忙しいから 家族写真も撮ってもらいましょうよ。」

と言うお母様の提案で みんな、当日の衣装を着ることになる。
 

私は、白無垢と色打掛の二着。

そして最後に 白のドレスを着る。
 

「美男美女で。カタログにしたいくらいです。」



カメラマンに言われて 智くんと私は 顔を見合わせて微笑む。
 


お父様をはじめ 家族みんなが 謙虚で礼儀正しいから。

スタッフにも 好感を持ってもらえる。



カメラマンも 何枚かサービスショットを撮ってくれていた。
 


順調にすべての撮影が終わり 楽な服装に着替えた私達は そのまま食事を頂く。
 

「麻有ちゃん、疲れたでしょう。」

お母様が言ってくれる。


私は 朝9時から支度に入っていた。
 
「全然です。着せ替え人形みたいで 楽しかったです。」

ドレスの化粧と髪型のままの私は いつもより少し大人っぽい。
 


「麻有ちゃん、全部よく似合っていたよ。でも、ドレスはやっぱり格別だね。」

とお父様に言われて 私は笑顔で頷く。


智くんを見ると 優しい笑顔で見つめてくれる。
 


食後に 撮った写真をモニターで見る。

どれも綺麗に写っていた。


アルバムにする物 披露宴の入り口に飾る物など それぞれを みんなで選ぶ。



賑やかで楽しい時間。
 


「私、世界一幸せな顔している。」

写真を見ながら私が言うと、
 

「みんなも、良い顔していますね。」

と父も言う。




世界一幸せな花嫁の家族は やっぱり世界一幸せなのかもしれない。 



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