ノクターン

4月14日は、朝から快晴で。

絶好の結婚式日和になった。


11時からの挙式で 私は9時までに入る予定だった。
 


早起きして サンドウィッチとコーヒーを ランチバッグに詰める。

私達は シャワーを浴びただけで 出発する。
 


「麻有ちゃん 今日は主役だから。大変だよ。」

智くんは、運転しながら言ってくれる。
 

「大丈夫。智くんは 運転もあるから。ありがとう。」

車の中 サンドウィッチを食べながら。


今日は 披露宴の後 直接成田空港に行き、オーストラリアに出発する。


車のトランクには 大きなスーツケースが2つ 積んであった。
 

「大丈夫だよ。楽しい事ばかりだからね。」
 
「私も。結婚式も披露宴も楽しみ。オーストラリアは もっと楽しみ。」


私は 笑顔が溢れていた。
 


「麻有ちゃん あんまり泣かないでよ。」

私が手渡すコーヒーを飲みながら。
 

「智くんこそ。お手紙、上手に読んでね。」

智くんのご両親に宛てた手紙は まだ渡してない。
 


「先に見せてくれないと 読む練習できないよ。」

昨夜も “ 見せて ” と言われて
 
「絶対、初めて読む方が 感動的に読めるから。」

と断っていた。



ちょっと恥ずかしかったから。
 

「見せるの、恥ずかしいんでしょう。」

と智くんは笑う。


次のサンドウィッチを 摘みながら。
 
「もう。智くんは、何でもお見通しだからなあ。」


私は 肩をすくめて笑う。
 


「この卵サンド、美味しい。朝早くから ありがとうね。」
 
「ううん。今日は ゆっくり食事できないと思うから。今のうちに 食べてね。」
 
「麻有ちゃんもね。教会でお腹鳴ったら 恥ずかしいからね。」


智くんは 楽しそうに笑う。

これから始まる 長い一日。

見てくださる方 みんなに自慢したい。


私の旦那様は 世界一だと。
 

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