ノクターン
「子供の頃、麻有ちゃんに 東京を案内するって約束したこと覚えている?」
「覚えているよ。昔、東京に行きたいって言って 母に叱られたわ。」
「これから一緒に、色々な所に行こうね。」
「ありがとう。」そのときまた飛行機が飛んでいく。
「わあ。」と言って顔を見合わせた私を 智くんは抱きしめた。
昨日のように優しく温かく。
心が熱い思いで満ちていく。
智くんのぬくもりに包まれていると、さっき康平と別れたことさえ 遠いことのように思えていく。
私の髪を優しく撫でていた指に導かれて
そっと顔を上げると 智くんに唇をふさがれた。
最初は優しく、徐々に激しさを増して。
お互いが抑えられるギリギリのラインが近づいた時、また飛行機が通過した。
地響きがするような轟音に、私達はゆっくり体を離し笑ってしまう。
「ちょっとロマンチックじゃないね。」
照れくさそうに智くんは言う。
「飛行機が、やきもち妬いているね。」
「お腹すいたなあ。ご飯行こうか。麻有ちゃん、何食べたい?」
智くんは気持ち良さそうに伸びをしながら言う。
そういえば、私は遅めの朝食しか食べていない。
急に空腹を感じる。
「私、好き嫌い無いから 何でも大丈夫。智くんが食べたいもので。」
「俺は、麻有ちゃん以外に食べたいものはないからなあ。じゃあお肉食べようか。スタミナ付けないとね。」
「もう、智くん。」私は頬を染める。
智くんの冗談にさえ ときめいていた。