ノクターン

あまりの寒さに 二人の体は冷えきって、私達は別荘を出た。
 
「これからは いつでも来られるからね。」

車の中で 私の冷えた指を暖めながら 智くんは言った。
 
「これからは、ウチのパパに 庭の手入れをしてもらおうね。」

泣き止んで、少し落ち着いた私が言うと
 


「今まで、泣いていたくせに。」

と智くんは笑った。
 


そして、すっかり暗くなった道を私達は ホテルに向かう。
 


智くんが予約していたホテルは、グランドエクシブ。

私達は、スーパースイートルームに案内される。


部屋に一歩入った途端 私は悲鳴を上げる。
 

「すごい部屋。こんな贅沢。智くん、美奈ちゃんに叱られるよ。」

広さ、内装、調度品、すべてに贅を尽くしたその部屋に 私は圧倒される。
 

「親父が会員だからね。室料は、安いんだよ。何回も使った方が得だからね。また来ようね。」
 

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