ノクターン

夕食は、中華のコースで。

手の込んだ盛り付けに感心しながら、私達は健康に平らげていく。
 
「お昼が、お蕎麦だもんね。」と言うと
 

「麻有ちゃんのご両親に認めてもらえて ホッとしたから。」と智くんは笑った。
 


「俺さ。マンションの事、麻有ちゃん いやなんじゃないか 気にしていたんだ。」

オマール海老を 頬張りながら智くんは言う。
 

「え、どうして。」
 

「親父の物だから。最初は賃貸でも、親の力借りないで自分達でって 思っているのかなって。」
 



「智くんと出会う前の私なら、そう思ったかも。でも、なんかね。甘えさせてもらうのも 親孝行かなって。」

私は素直に答える。
 

「お父様が用意してくれた家に住んで 私達が仲良く、幸せに暮らす姿を見て頂くことが 恩返しになるのかな、なんてね。」
 


「麻有ちゃん、ありがとう。」

智くんは、愛のこもった目で 私を見てくれる。
 
「こちらこそ。ありがとう。新婚早々、恵まれた生活をさせて頂いて。その分ね、たくさんの物に触れて 色々な経験をして 思いやりのある生活をしようって思うの。それが 廣澤家の一員になる責任かなって。」
 


「やっぱり麻有ちゃんは最高だ。ちょっと感動しちゃったよ。」
 
「やだ、ほめ過ぎだよ。智くんが、私を変えてくれたんだよ。」

私達は、熱く見つめ合った。
 
 
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