えっ?私が男装女子になるなんて!

柔《ダン》

「ーーーきゃあぁぁぁいやぁぁなになになになに貴方だれ?」

「すっごっ!誰でもいいわよ!私、貴方指名するわ!ずっーと貴方だけでいいわ!」

「お嬢様方今宵はようこそお越し下さいました。御指名いただき有難いのですが誠に申し訳ございません。今宵、私はこちらでお嬢様方のお出迎えですので、もう暫く後、あちらに行かせていただきます。それ迄、今暫くあちらで皆とお楽しみくださいませ」

「いゃあぁぁぁぁぁぁー」

「待ってるわ!私はずっーと貴方が来るのを待ってる」



俺と同僚のミシェルはバックヤードで着替えながらも、入り口の扉から聞こえてくる、お客の叫び声を聞きお互い顔を見合わせた。


「おいおいおいおい……今日は出入り口がえらいことになってんな」

「うん!あれはすっごいよね。あんなの初めてじゃないの?大型新人来たりてだね」

「ダン、ミシェル何無駄口叩いてんの!あちらのお嬢様暇そうよ行きなさい。貴方達も頑張んないと追い抜かされちゃうわよ」


今日は珍しく社長が早く来ていた。と、言うよりも待ち構えていた様だった。


「社長!そーは言っても、あそこまで核の違いを見せ付けられると虚しさ通り越して拝んじゃうよ僕」

「ミシェル……だよな!わかる。それに、あの衣装も反則ですよね。社長!」

「えっ……解っちゃった。あの日あの子みてさぁあの子に似合う衣装が頭にパァーッて浮かんでね。その日、徹夜して製作しちゃったのよ!どう?似合ってるでしょ。最高傑作なのよ」

「僕も僕専用の衣装欲しいなぁ~社長~」

「貴方は可愛らしい小姓のその衣装合ってるわよ。他にも数着、貴方サイズの似合うのあったでしょ」

「駄目か!新しいの欲しかったのにいい!じゃあ僕はお仕事頑張ってきまぁーす」


ミシェルに続いて、俺も出ようと社長の横を通り過ぎ様とした時、やんわりと社長に腕を掴まれた。


「ダン。貴方はおねだりしないの?新しい衣装欲しくない」

「俺は……私はここの衣装は全てが貴女の作品ですから、それで充分です。私のサイズは結構ありますから、色々着れて楽しいですよ」


今日の私は、紅と銀のキリッと落ち着いた感じの貴族の衣装。


「ふぅーん……そうなの。わかったわダンにとびっきり似合うの作ってあげる。でもね、それはここで着ちゃあダメよ。今週末、マンションにいらっしゃい。そこで2人だけのお披露目会よ」

「……」

「私ね、なが~いなが~い片想いが終わっちゃうのよ。結婚しちゃうの厳つい男とね。今週末に……美雪がマンションで待っててくれるのなら、私……頑張って結婚式で友人代表のスピーチやり遂げて見せるわ。どう?来てくれないかしら」


私は俯き泣きたいのを堪える……私のギュッと握った手を、社長の暖かい柔らかな手が包み掌を開いていく。掌の中に冷たい小さな鉄の塊が一つ置かれ。



「待っててね美雪の元へ帰っていくから」
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