屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜




壁で 跳ね返った残響


逃げる羽音




「 ―――… ハルト?

な…なんで拳銃持ってるの?!!

もしかしてそれ…

"卑怯者の武器"だって
きらいだって言ってたのに…!! 」



「 今回は、本気だって事だよ?ルウ
さあ、こっちに来なさい ――― 」




その声には
焦りも怒りの感情も無く


向かって来る足取りは
当たり前の日常の動き




それに併せ、一歩進めた足先で
アスファルトが弾けた




「 リュウジ!!!」




「 … 怖いなぁ…動くなよ
本気だって言ったろう?


――― テメェは強いからな




… 覚えているかい?
マンハッタン、高層ビルの駐車場


ちょっと油断した隙に肋骨と鎖骨
バキバキに折られた事は忘れてないよ…




あんな事、俺初めてだったからぁ…
そう…かなり…屈辱だったね ―――




大変だったんだぜ?
服の下は包帯グルグル巻き
胸の辺りは腫れてパンパン

暫く息をするのも
歩くだけでもやっとだった…




… しかも厚顔と来てやがるから
遠回しやイヤミっていう武器が
まっったく通じないみたいだしさあ


なあ…
まだわかんねえの?


お前がやった失態っていうのはさ
本来なら取り返しがつかない事なの


たまたま、ルウが頑張って
こっちに戻って来ただけなんだよ




これでルウを連れて…
何処かに篭るっていうなら
まだ努力の気配も見えるけどさあ


あのウスラバカどもと
また歌わせるとか、どういう了見? 」




「 ――― あずるが望んでる 」



「 望んだら
何でも言う事聞くのかよバーカ!!! 」




叫びと共に
向けられた銃口








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