縁の下の恋


一理は、まだまだ木谷工場長と話したい事があったにもかかわらず、沢山のお客様に挨拶をしなくてはならず、その日はあっという間にパーティーは終わり、一理が工場長と話す事は出来なかった。



一理には両親に内緒にしている事があった。



大学へ入学するまでの間、それまでコツコツ勉強をしていた。



ピアノのレッスンも、バレーのレッスンも、休まずに続けながら、部屋に戻った時からが唯一、一理の自由な時間であった。


これ程わくわくする勉強は他には無かった。



電気工事技師… 普通は、男性しかとろうとはしない資格ではあったが、一理は関連教材を全部買って来ては片っ端から目を通して独自に勉強をしていた。



深夜まで、本を読んでいても、嬉しくて仕方が無かった。



そうしているうちに、あっという間に月日はながれ、相変わらずなお嬢様生活からは、抜け切らないまま、大学生となってしまっていた。
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