王子様に恋をした
いよいよロイド様のご生誕をお祝いする演奏会が始まりました。

侯爵様ご夫妻とロイド様がおられる壇上から右前方に小さな段が設えられており、その壇上にて楽器を演奏するのです。

各々がガーディアン侯爵ご夫妻とロイド様ご自身へのお祝いの言葉を述べると、得意の楽器でお祝いの音楽を奏でます。

この日演奏を行うのは私を含め7名でした。

バイオリン チェロ フルートは、演者自ら持ち込みを致しますが、ピアノは侯爵家にある物を使用させて頂くことになりました。

私は当然ピアノを演奏致します。

他の方々が見事な演奏をなさっている(であろう)中、私はそれ等の音が遠くで聴こえるかのように、自身が演奏する曲を脳内で弾きながら、最終おさらいをしておりました。

いよいよ私の番が参りました。

段に上り侯爵ご夫妻とロイド様がいらっしゃる方向を見ながら、ドレスの裾を摘みカーテシーをした後、

「この度は、このようなお祝いの席にお招き頂き、誠に嬉しゅう存じます。ロイド•J•ガーディアン様。本日はご生誕おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。拙い演奏ではございますが、お聴き頂けますと幸いに存じます。」

震えそうになる声をなんとか抑えながら、私はピアノの前に腰掛けました。

ふぅと大きく息を吐き出し、ピアノに指を置くと、(邸では、練習前にお母様が必ず、「間違いなく演奏出来たら、お茶にしましょうね?アイリーンが作ったお菓子を頂きながら休憩致しましょ。」と仰るので、私はそれを楽しみに練習をしてたのよね。)邸での事を思い出し、ふっと笑ってしまいました。

するとどうでしょう。余計な力が抜け、私はリラックスして演奏する事が出来たのでした。
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