王子様に恋をした
最後の音まで丁寧に弾ききり手をピアノから離すと、皆様から温かい拍手を頂けた事に、安堵したら涙が出てしまいました。

なんとか礼を取り舞台を降りますと、お兄様が満面の笑顔で

「アイリーン。本当に良くやったね。頑張ったよ。」

と頭を撫でて下さいました。

「もう、お兄様!私は子供では無いのです。」

と睨みましたが、お兄様はニコニコ笑って「うんうん」と仰っているだけでした。

演奏は進み、最後の演奏者になりました。
勿論リュークアッセンドラ殿下です。

殿下はバイオリンの名手と噂される程の腕前だそうで、私も是非一度お聴きしたいと思ってました。

会場に集まられた方々からの拍手をお受けになり壇上に上がられた殿下は、

「ロイドにはさっき祝いの言葉は述べたから、もういいよな?」

と仰い、会場からドっと笑いが起こり、あっという間に和やかな雰囲気になりました。

流石は殿下でした。私はそんな殿下を尊敬の眼差しでもって見つめ、いつかその澄んだ殿下の瞳に私を映して下さる日が来たらどんなに素晴らしいでしょうと思っておりました。

「私のバイオリンだけでは面白いないので、一緒に演奏して下さるご令息ご令嬢をお願いしたいと思う。」

先程まで和やかな会場が、殿下のそのお一言でざわつき始めました。

「殿下と御一緒だなんて緊張しちゃいますわ。」
「私、演奏は苦手ですの。悔しいですわ。」

「先程の演者の中から、私が独断で決めさせて貰った。今からお名前をお呼びする。先ずはチェロ……
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