授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
明るいトーンで話していたつもりが、次第に尻すぼみになってしまった。視線を落とし、幸せそうに笑っている聖子の顔を思い返す。

「自分の友達がお母さんになったんだって実感したら、遠い存在に思えてきたんだろ?」

自分でもこの感情は何なんだろうと思っていたところに鋭く指摘されて、ハッと視線をあげると包み込むような黒川さんの笑顔に鼻の奥がツンとなる。

「菜穂は意外に寂しがり屋なんだな」

「え……」

「寂しがり屋で、恥ずかしがり屋。けど、芯が強くて曲がったことが嫌いで……」

ああ、私ってめんどくさい女だって思われてるのかな。確かに言われた通り……私、寂しかったんだ。

「俺はそんな君が好きなんだ。菜穂、あのさ……」

急に黒川さんが改まって、手にしていたワイングラスをテーブルに置くと、真剣な眼差しを私に向けた。

「大事な話があるんだ」

「大事な、話?」
< 113 / 230 >

この作品をシェア

pagetop