授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
なんだろう。も、もしかして……お父さんのことがバレちゃった、とか? それで検事の娘とは付き合えない、って言われちゃうとか? 

思い当たる節がありすぎる。先走ったことを考えるだけで喉がカラカラに乾いて、私の頭の中はネガティブなことで埋め尽くされた。

どうしよう、どうしよう、大事な話って――。

「俺と結婚して欲しいんだ」

せり上がる焦燥に手に汗握っていると、思いも寄らぬことを言われてポカンとする。

え? 今、なんて? 結婚?

瞬きも口を閉じることも忘れて、黒川さんに言われた「結婚して欲しい」という言葉が何度も脳内再生される。

「実は、今夜これを渡そうと思って」

黒川さんが取り出したのは、真っ赤なリボンがかかっている小さな白い箱。

「開けてみてくれないか」

コクンと頷いてそっと壊れ物を扱うような手つきで箱を開けて見ると、そこには――ダイヤのついた銀白の指輪が静かに煌めいていた。

「これ……」
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