授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
NOとは言わせない、と彼の目が言っている。黒川さんが父のことを受け入れてくれても、父が反対する可能性は大だ。けれど、今はそんな考えにモヤモヤするよりも彼と一緒になりたいという気持ちがすべての不安を打ち消した。

「はい。是非。私を“黒川菜穂”にしてください」

声が震える。気づかれたくなくて堪えるけれど、水分を含んだ瞳から一粒の涙がこぼれる。

「黒川菜穂、か……いい響きだな。帰ろう。今夜は、寝かせたくない。この意味、わかるだろ?」

彼が前のめりになって私の濡れた目じりをそっと拭う。

薄れることを知らない甘い気配が一気に胸に充満し、私を見つめる黒川さんの瞳には情熱的に求められたくて蕩けた私の姿が映っていた。
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