授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「検事は対立不可避な関係だって言われたとき、もうどうしようかと思ってました……」

「それについては君の気持ちも考えずに安易なことを言ってしまったと思っている。俺の言ったことで、君を悩ませた」

眉尻を下げ、すまなそうにしている彼に私は全力でブンブンと首を振る。

「私、馬鹿みたいですね。黒川さんが父のことを知ってるなんて思わなくて……でも、私も黒川さんのことが好きだから、もう隠せないって」

「正直言うと、俺の口から松下検事のことを話したら、なんとなく君が離れていってしまうような気がして……俺もずっと言い出せなかった。確かに検事は弁護士にとって真逆だし、敵対関係だなんて言われてるが……それとこれとは別だ。俺は菜穂のすべてが好きなんだ、だから君のお父さんが松下検事だって言うことも、全部受け入れる」

雨水が干からびた土に染み込んでいくように、黒川さんの言葉が胸にじんわり広がって満たされていくのがわかる。安堵の波が堰を切って一気に溢れだすと、はぁぁと長く息づいた。もし、椅子に座っていなかったら、その場でへなへなとへたりこんでいただろう。

「安心したか? ほかに心配事は?」

「……ありません」

「じゃ、その指輪、受け取ってくれるな?」
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