授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
最悪……。

外は大雨で私は傘もささずにトボトボ大通りを歩いていた。ずぶ濡れのまま惨めな気持ちを掻き抱くと、今まで堪えていた大粒の涙が一気に溢れ出た。

最悪なのは雨のせいじゃない。今まで何も知らずに黒川さんと婚約したと、馬鹿みたいに浮かれていた自分自身だ。

――あなたは真由の面影に重ねられて見られてるお飾り婚約者なの。

――本当に愛してるならなおさらよ。

紗季さんの言葉は今でも私の心を引っ掻き続け、じくじくと胸が痛い。

すっかり濡れそぼった私を道行く人が怪訝な視線を投げてくる。そんなこと構わずに叫びだしたい衝動を堪え、黒川さんのいないマンションへ帰ることにした。


彼のいない部屋がこんなにも暗くて寒いものだとは思わなかった。いつも一緒に帰宅するからなおさら殺風景に感じる。帰って来る途中で誰かに声をかけられたような気もするけれど、あまり覚えてない。

「うっ、うぅ……」

自分の部屋のドアに凭れたまま背中からずるずると崩れて落ちると、抑えきれない嗚咽が漏れる。今夜は私ひとりだ。そう思うと、堰を切ったように感情が爆発したそのときだった。バッグの中からスマホの着信音がしてぴたりと息を詰める。電話の相手は……黒川さんだった。

「……もしもし」
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