授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
――あなたが慧介の近くにいると、いつまでも真由の面影に捕らわれて彼は前に進めない。

――だからね、慧介の相手に相応しいのはあなたじゃなくて、私よ。

すまなそうに眉尻を下げる黒川さんに、紗季さんが笑って腕を絡ませる。そして二人は私に背を向けた。

――嫌っ! 待って! 行かないで!


「ほ、な……菜穂、菜穂!」

誰かが私の名前を呼びながら身体を揺さぶっている。耳元で大きな声がして途切れた意識を繋ぎ止めて瞼は開いたものの、水に潜ったときのように視界が不明瞭だ。

「菜穂! 大丈夫か!?」

何度か瞬きすると、目の前に黒川さんの顔が飛び込んできた。

「……く、ろかわ……さん?」

わかりやすくホッとした表情をする黒川さんの背後には部屋の天井がある。どうやら私は床に寝転んでいるらしい。

「おい、しっかりしろ、ちゃんと意識あるか?」

これは、夢?
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