授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
店にシャッターを下ろし、光弘さんと別れて事務所へ向かう。黒川さんから連絡がない限りは、店が終わる時間と同時に彼の仕事も終わる。そして家に帰ってから私が夕食を作るのが毎日の日だ。

今日の夕食なににしようかな。グラタンとかいいかも。うーん、でも最近和食作ってないから魚の煮つけとか? 

そんなことを考えながら事務所の前に近づくと、ビルからちょうど黒川さんが出てくるのが見えた。

「あ、――」

黒い傘を差した彼の後から、続いて出てきた女性を見て立ち止まり息を呑んだ。

あれは……紗季さん?

真っ赤な傘を広げた後、一瞬こちらを見た気がして私は咄嗟に傘で顔を隠す。

偶然、一緒に仕事が終わって二人で降りてきただけだよね?

恐る恐る顔を上げると、そんな思いも虚しく、黒川さんと紗季さんは背を向けて歩き出していた。私の存在すら気づかずに。

ど、どうして行っちゃうの……?
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