授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
気が動転して立ちすくむ。

紗季さんと別れて、そのまま私を待ってくれると思っていたのに。

そして夕方からスマホのチェックをしていなかったことを思い出してバッグから取り出してみると、黒川さんから未読のメールが入っていた。送られてきたのは三十分前。

【悪い。急な仕事が入った。雨が降ってるし、タクシー使って先に帰っててくれるか? 気をつけろよ】

とんだすれ違いだった。黒川さんは仕事と言っているけれど、私は彼が紗季さんと一緒に事務所から出て行くのを見てしまった。

追いかけて後をつけてみようか? ううん、そんな疑うようなこと……。

迷っている間にもどんどん二人は雑踏に紛れていく。私は唇を噛み締め、一歩足を踏み出した――。


黒川さんたち、どこへ向かってるんだろ……。

結局、タクシー乗り場へ行くことなく私は数メートル間をあけて二人の後ろを歩いていた。道行く人が傘を差しているおかげでなんとか身を隠せているけれど、後ろめたい気持ちでモヤモヤしている。

二人はしばら大通り沿いを歩いてから角を曲がった。私の知らない道だ。続いて私も角を曲がった途端、目の前に怪しげな照明が瞬くネオン街が広がった。

こ、ここって……。
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