授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
私が核心をつくことを言うと、父は眉をピクリとさせここで初めて顔色を変えた。
「まったく、誰からそんな話を聞いたんだ? 純一のやつだな? まったく、余計な事を……」
苦虫を嚙み潰したような顔をして父は小さく舌打ちした。この話をすれば確実に機嫌が悪くなるとわかっていたけれど、坂田所長から言われたことをそのまま鵜呑みにするのではなく弁護士嫌いの理由をちゃんと父の口から聞きたかった。それに父にしかわからない思いもあるだろう。
「ああ、そういえば……」
自分にとって都合の悪い流れを断ち切りたかったのか、父は話を逸らすように懐から見覚えのある紙袋を取り出し、私の目の前に差し出した。
「黒川君からせめてお前に渡して欲しいと懇願されて、仕方なく預かったものだ」
紙袋の中からほのかに香ばしい香りがする。中を見ると、あんパンがひとつ入っていた。特徴もなく、素朴な形をしたそれは紛れもなくベーカリーカマチのあんパンだ。
「念のため中身を確認したが、ただのあんパンのようだったからな。問題ない、渡しておこう。それとお前が世話になっていたパン屋だが、私から事情を話して昨日付で辞めさせてもらった」
「な、なんでそんな勝手なこと!」
「あんな下町のパン屋で働くなんぞ、お前には相応しくないからな」
こんがりと焼き色のついたあんパンを見ていると、ベーカリーカマチの人たちの顔が浮かび一気に視界がぼやけて鼻の奥がツンとした。
「まったく、誰からそんな話を聞いたんだ? 純一のやつだな? まったく、余計な事を……」
苦虫を嚙み潰したような顔をして父は小さく舌打ちした。この話をすれば確実に機嫌が悪くなるとわかっていたけれど、坂田所長から言われたことをそのまま鵜呑みにするのではなく弁護士嫌いの理由をちゃんと父の口から聞きたかった。それに父にしかわからない思いもあるだろう。
「ああ、そういえば……」
自分にとって都合の悪い流れを断ち切りたかったのか、父は話を逸らすように懐から見覚えのある紙袋を取り出し、私の目の前に差し出した。
「黒川君からせめてお前に渡して欲しいと懇願されて、仕方なく預かったものだ」
紙袋の中からほのかに香ばしい香りがする。中を見ると、あんパンがひとつ入っていた。特徴もなく、素朴な形をしたそれは紛れもなくベーカリーカマチのあんパンだ。
「念のため中身を確認したが、ただのあんパンのようだったからな。問題ない、渡しておこう。それとお前が世話になっていたパン屋だが、私から事情を話して昨日付で辞めさせてもらった」
「な、なんでそんな勝手なこと!」
「あんな下町のパン屋で働くなんぞ、お前には相応しくないからな」
こんがりと焼き色のついたあんパンを見ていると、ベーカリーカマチの人たちの顔が浮かび一気に視界がぼやけて鼻の奥がツンとした。